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ライフサイクルアセスメント(LCA)とカーボンフットプリント(CFP)の違いについて解説 - コラム

昨今、地球温暖化をはじめとする気候変動問題に対応するために、国や企業はCO2等の温室効果ガス(以下、GHG)排出量の見える化および削減に努めています。その中で、製品やサービスの環境への影響を評価する指標である「ライフサイクルアセスメント(以下、LCA)」や「カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products 以下、CFP)」という言葉が注目を集めています。
特にCO2排出量が多いとされる製造業や、バリューチェーンの上流に位置する鉄鋼業界や化学業界にとって、LCAやCFPは今後さらに重要なテーマになることは間違いないでしょう。

本記事では、環境負担を評価するための手法であるLCAとCFPについて、それぞれの実施方法や評価対象などを比較しながら、わかりやすく解説します。

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体における環境負担を、定量的に評価する手法のことです。
LCAの特長として、GHG排出量だけではなく、オゾン層破壊や酸性化さらに水資源消費や生態系破壊など、様々な環境負荷の評価が可能であることが挙げられます。
また、LCAの結果を用いることで、製品やサービスのライフサイクル全体において、環境負荷を最小化するための改善点を特定することができます。そのため、LCAの取り組みがカーボンニュートラルの実現に繋がり、結果として投資家や消費者などのステークホルダーからの信頼を獲得できます。さらに、LCAの結果は、新たな戦略立案や商品開発などのマーケティングにも活用することができ、企業の収益化にも繋げることができるでしょう。

LCAの概要

ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施方法について

LCAの実施手順は、LCAの原則と枠組みを定めているISO14040にて国際規格化されており、この国際規格の中には、基本的な要件や実施手順が記載されています。
具体的な実施手順としては、①目的と調査範囲の設定、②インベントリ分析、③インパクト評価、④解釈、の4つのフェーズがあり、これらのフェーズを繰り返し行うことで調査結果の信頼性や妥当性を高めることができます。

以下の図は、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の資料を参考に、ISO14040によるLCAの実施手順をまとめたものです。本記事では、こちらの4つのフェーズについて詳しく解説します。

LCAの実施手順

1.目的と範囲の設定

まず、何のためにLCAを実施するのか、そしてどこまでを調査の範囲とするかを設定します。ここで設定する目的や範囲によって、後のステップで行う分析や調査領域が決定されることから、LCAの方向性を定めるフェーズとして位置づけられています。
具体的に、調査の目的/調査の対象製品やサービス/評価対象の環境問題/評価結果の使用用途などを定めておくことが求められます。

2.インベントリ分析

次に行うのがインベントリ分析です。
インベントリとは明細表のことを指しており、①の目的と範囲の設定で設定した調査範囲における、各プロセスのインプットデータとアウトプットデータを収集・計算することで、環境負荷項目に関する入出力明細一覧、つまりインベントリデータを作成します。
インプットデータには、素材や部品、エネルギー、生物系資源などがあり、一方アウトプットデータには固形廃棄物、再生資源、大気排出物、水質汚濁物質などが挙げられます。インベントリ分析を通じて、各プロセスにおける資源の消費量や環境負担への影響を見える化することが可能です。
以下、インプットデータおよびアウトプットデータの例です。

イベントリ分析

3.インパクト評価

インパクト評価とは、②のインベントリ分析の結果をもとに製品やサービスが、どの環境問題に対して、どの程度環境負担の影響を与えているのかを定量的に評価するフェーズです。
このフェーズについては、現在複数の手法が開発・検討されており、確立されたフレームワークや方法論が存在していません。そのため、LCAに主観的な要素が入ってしまう恐れがあるため、専門家も交えながら、透明性を担保した報告書を作成する必要があります。

4.解釈

解釈では、①で設定した調査目的と、②や③で行った分析や評価結果を照らし合わせ、今後の改善策についての結論を導き出すフェーズです。
このフェーズも③のインパクト評価と同様に、確立された方法論が存在していないため、第三者の専門家を交えながら調査結果の正当性を客観的に検証することが求められます。尚、LCAによって得られた結果や情報は、製品の開発・改善や計画立案、公共政策など、様々な用途に活用することができます。

カーボンフットプリント(CFP)とは?

CFPとは、製品やサービスにおける原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHG排出量を、CO2排出量に換算して数値化したものです。
例えば工場で製品を生産する際に使用されるエネルギーや輸送に伴う燃料燃焼で排出されるGHG排出が算定対象として該当します。また製品を製造するために調達された原材料も、原材料の製造時にGHGが排出されたため算定対象とします。

CFPに取り組むことは、企業と消費者の双方にメリットがあります。
企業にとっては、CFP を算定通じて自社の排出量が多いポイントを理解できるため、効果的な排出削減対策の検討や排出削減効果のモニタリングをすることができます。その結果、自社のCO2削減を効率的に実現できるだけではなく、ステークホルダーに対して自社の環境活動をアピールすることにも繋がります。
消費者はこれまで、CO2をはじめとするGHGの排出が地球温暖化の原因になっていることを知っている一方、日常生活の中で自身がどれほどのCO2を排出しているかを認識できていませんでした。さらに、環境に良い活動を行ったとしても、実際にどの程度のCO₂削減に貢献できたかを実感することができませんでした。しかし、CFP算定が浸透されれば、自身の環境活動を実感できるようになるため、環境に良い製品を積極的に選択することが期待されるでしょう。

カーボンフットプリント(CFP)とは?

カーボンフットプリント(CFP)の実施方法について

CFPは以下の4つの手順に沿って行われます。

カーボンフットプリント(CFP)の実施方法について

1.算定方針の検討

まず、CFPに取り組む目的や、誰に向けた算定であるのか、さらに算定のルールについて検討します。
目的を設定する理由は、CFP算定の客観性や正確性の程度を判断するためです。特に、商品が他社商品と比較されることが想定される場合、参照する算定ルールを統一する必要があります。

2.算定範囲の設定

次にCFP算定を実施する範囲の設定をします。
CFPの算定単位は基本的に、製品システムの定量化された性能である「機能単位」で定義する必要があり、これを定めることで一定の性能あたりのGHG排出量を算出することができます。しかし、機能単位での定義が困難な場合や中間製品を扱う際には、機能単位を実現するための製品の個数や量を示す「宣言単位」を用いることも可能です。
算定範囲を設定後、ライフサイクルフロー図を作成することで、対象とするライフサイクルのプロセスやデータの収集期間、また除外するプロセスなどを設定します。対象とするライフサイクルは最終製品であれば原材料調達から廃棄・リサイクルまで、中間製品であれば原材料調達から製造までが基本となっています。

3.CFP算定

CFPは算定範囲のプロセスごとの排出量を計算し、全体の合計値として算出します。計算式は、以下の通りです。
GHG排出量=活動量×排出係数

データの収集に関しては、基本的に自社で取得した1次データを使用する必要がありますが、1次データの収集が困難な場合には、できる限り客観的で信頼性の高いデータを活用することが求められます。

4. 検証・報告

CFPの信頼性を担保するために、算定が適切に実施されたか否かを、内部検証や第三者検証を用いて実施することが望ましいとされています。しかし、内部検証と第三者検証では、それぞれ要するコストと得られる効果が異なるため、CFPの目的や用途に応じて正しく選択する必要性があります。
また、検証後は検証結果をCFP算定報告書としてまとめ、顧客企業や消費者などに向けて公開します。尚、公開の際には読み手がCFP算定の内容を理解できるように透明性を担保し、結果・データ・⼿法・仮定・解釈について、詳細に説明しなければいけません。

ライフサイクルアセスメント(LCA)とカーボンフットプリント(CFP)の違い

これまでLCAとCFPの基本的な内容や実施方法について説明してきました。どちらも環境負荷を評価する手法であり、混同されることもあるため、ここからはLCAとCFPの違いについて詳しく解説します。

結論、LCAとCFPの大きな違いは環境負荷の評価対象にあります。
CFPがGHG排出量の評価のみを対象にしているのに対し、LCAではオゾン層破壊や酸性化、さらに生態系の破壊など多岐に渡る環境負荷を評価することができます。つまり、環境評価指標であるLCAの構成要素として、CFPが存在しているということです。

ライフサイクルアセスメント(LCA)

そのため、実施目的や使用用途に応じて、LCAとCFPを使い分ける必要があります。
LCAは製品やサービスのライフサイクル全体における環境負荷を評価する手法であり、多岐に渡る環境問題に対して、その影響を評価します。したがって、製品やサービスの改善や設計に関する意思決定を支援し、持続的な環境パフォーマンスの向上を目指す場合にはLCAが適しています。
一方、CFPはGHG排出量に焦点を当てた評価手法であり、主に製品やサービスのCO2排出量を見える化することに特化しています。そのため、主に企業・組織や製品がどの程度地球温暖化に関与しているのかを評価し、その影響を把握することを目的とした場合にはCFPが有効です。また、企業がGHG排出量の見える化ができることで、カーボンニュートラルの実現に向けたGHG排出量削減策や戦略立案にも役立てることができます。

化学品向けCFP算定支援サービス「EcoLume™」とは?

本記事では、気候変動問題への対策意識が高まる中、環境負担を評価するための手法として注目を集めているLCAとCFPについて、それぞれの実施方法や評価対象などを説明してきました。LCAとCFPにはそれぞれの特長があるため、具体的な実施目的や使用用途を明確にした上で適切な手法を選択し、取り組んでいくことが大切です。

今後、特にCO2排出量が多い製造業やバリューチェーンの上流にある化学業界では、顧客からのGHG排出量に関する情報開示の要請に応えるために、LCAやCFPの取り組みが必要とされています。CFPやLCAにいち早く取り組むことができれば、他社との競争優位性を高めることができ、コスト削減やブランド価値向上など、様々なビジネスチャンスの獲得に繋がります。

そこでBIPROGYは、製品単位のGHG排出量であるCFPの算定を支援するためのソリューションとして、「EcoLume」を開発しました。
「EcoLume」は、化学産業に特化したCFP算定支援サービスであり、化学産業のお客様が抱えている多種多様な課題に対して、①算定支援コンサルティングサービス、②算定業務代行サービス、③CFP算定システム、の3種類のサービスを展開することで、それぞれのお客様に最適なご提案を実現します。